遺言書の内容はあとから書き直せる?変更・撤回のルールをわかりやすく解説

行政書士監修
監修:行政書士 田村仁志(登録番号 第26250869号)/滋賀トラスト行政書士事務所

「数年前に遺言書を書いたけれど、事情が変わったので内容を変えたい」「公正証書で作った遺言書は、もう無かったことにはできないの」。終活のご相談では、こうした遺言書の「変更」や「取り消し」についてのお悩みをよく耳にします。

遺言書は「一度書いたら絶対に変えられない」と思われがちですが、実は、ご自身が元気なうちであればいつでも自由に変更や撤回(取り消し)をすることが可能です。この記事では、遺言書を後から書き直すためのルールや、実務上よくある失敗を防ぐポイントを行政書士が解説します。

目次

遺言書は「いつでも・何度でも」書き直せる

民法1022条では、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と明確に定められています。

つまり、ご自身の財産状況が変わったり、お世話になった人が変わったり、心境に変化があったりした場合、何度でも書き直すことができるのです。遺言書を何度書き直したとしても、最も日付の新しい(一番最後に書かれた)遺言書の内容が有効となります。

遺言書を変更・撤回するための3つの方法

実際に過去の遺言書を無かったことにしたり、内容を変えたりするには、主に次の3つの方法があります。

  • 方法① 新しい遺言書を書く(最も確実でおすすめ)最も一般的で確実なのが、新しく遺言書を書き直す方法です。古い遺言書と新しい遺言書の内容が矛盾(抵触)している場合、その部分については新しい遺言書によって古い遺言書を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。例えば「A不動産を長男に譲る」という古い遺言がある状態で、「A不動産を次男に譲る」という新しい遺言を書けば、A不動産については新しい遺言が優先されます。
  • 方法② 遺言書を自分で破り捨てるご自宅で保管している「自筆証書遺言」の場合、ご自身で故意に遺言書を破棄(破り捨てる・燃やすなど)すれば、その遺言は撤回されたものとみなされます(民法1024条前段)。
  • 方法③ 生前に財産を処分してしまう遺言書に書いた財産を、ご本人が生前に売却したり他人に譲ったりした場合も、その部分の遺言は撤回されたものとみなされます(民法1023条2項)。例えば「自宅を長男に相続させる」と遺言に書いていても、生前に自宅を売却してしまえば、その部分の遺言は無効(撤回)になります。
要注意:破り捨てても撤回にならないケース

公証役場で作成した「公正証書遺言」の場合、原本は公証役場の金庫で厳重に保管されています。そのため、ご自宅にある「正本」や「謄本(コピー)」を破り捨てても、遺言を撤回したことにはなりません。

また、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合も、手元にある保管証などを捨てただけでは撤回にはならず、法務局で保管申請の撤回手続きを行う必要があります。こうした公的な機関を利用した遺言の場合は、「方法①」のように新しい遺言書を作成して古い遺言を上書き(撤回)するのが一般的です。

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よくある疑問:公正証書遺言を「自筆」で変更できる?

「昔、公正証書で遺言を作ったけれど、公証役場にまた行くのが手間だから、自分で書いた遺言(自筆証書遺言)で内容を変更したい」。このようなご質問もよくいただきます。

結論から言うと、法律上は可能です。遺言の方式(種類)に優劣はないため、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回・変更することも、その逆も問題なく行えます。

しかし、専門家の視点からは「公正証書を自筆証書で変更すること」は絶対におすすめしません。なぜなら、せっかく新しく書いた自筆証書遺言に書き方のルール違反(日付の不備や、不明確な表現など)があり「無効」と判断されてしまった場合、そもそも有効な撤回が行われなかったことになり、古い公正証書遺言がそのまま効力を持ち続けてしまう恐れがあるからです。確実な変更を望むのであれば、新しい遺言も「公正証書遺言」で作成し直すのが鉄則です。

失敗しないためのポイント:「一部変更」より「全部書き直し」

遺言書の「一部だけ(第〇条だけ)」を変更することも法律上は可能です。しかし、一部変更の遺言書を作ると、ご自身が亡くなった後、ご遺族や遺言執行者は「古い遺言書」と「一部を変更した新しい遺言書」の両方を読み比べながら手続きを進めなければならず、非常にわかりにくく混乱を招きます。

実務上は、たとえ変更箇所がわずかであっても、「前の遺言を全部撤回し、すべて新しく書き直す」という形(全部撤回)をとるのが最も安全で、残された人にとっても親切な方法です。

よくあるご質問

遺言書は一度書いたら変更できませんか?
いいえ、ご自身が判断能力を有する限り、何度でも自由に変更・撤回することができます(民法1022条)。
古い遺言書と新しい遺言書、どちらが有効ですか?
内容が矛盾する部分については、日付の新しい遺言書の内容が優先されます。
公正証書遺言を手元で破棄すれば撤回できますか?
できません。原本は公証役場に保管されているため、手元の正本・謄本を破棄しても撤回にはならず、新しい遺言書の作成などが必要です。
公正証書遺言を自筆証書遺言で変更できますか?
法律上は可能ですが、専門家としてはおすすめしません。新しい自筆証書遺言が方式不備で無効になった場合、古い公正証書遺言がそのまま効力を持ち続けてしまうリスクがあるためです。
遺言の内容を一部だけ変更することはできますか?
法律上は可能ですが、古い遺言書と新しい遺言書の両方を確認する必要が生じ、遺族や遺言執行者が混乱しやすくなります。実務上は全部を書き直すことをおすすめしています。
田村仁志(行政書士)
田村仁志(行政書士登録番号 第26250869号)
行政書士・宅建士・FP・測量士補/滋賀トラスト行政書士事務所 代表

相続・終活分野を中心に、大津市・滋賀県全域でご相談に対応。同一フロアに併設する司法書士事務所と連携し、死後事務委任契約から相続登記まで一貫してサポートします。

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まとめ
  • 遺言書は、判断能力があるうちはいつでも自由に変更・撤回できる
  • 最も確実なのは、新しい遺言書を作成して古い遺言を上書きする方法
  • 公正証書遺言は原本が公証役場にあるため、手元の書類を破棄しても撤回にはならない
  • 公正証書を自筆証書で変更するのはリスクがあり、専門家としてはおすすめしない
  • 一部変更より、全部を書き直す方が遺族にとってわかりやすく安全
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