「数十万円もの高額なお金を事前に預けて、本当に大丈夫だろうか」「契約した会社が倒産したら、預けたお金はどうなるの」。死後事務委任契約のご相談で、最も多く寄せられる不安が「お金(預託金)の安全な管理」についてです。
この記事では、実際に起きた預託金トラブルの事例と、安全に守るための仕組み、契約前に確認すべきポイントを行政書士が解説します。
なぜ「預託金」のトラブルが起きるのか?
死後事務委任契約の最大の特徴は、契約してから実際に事務が実行される(ご本人が亡くなる)までに、何年、場合によっては何十年という長い期間が空くという点です。事業者側は、その長い期間にわたってお客様からお預かりした「預託金」を保管し続けなければなりません。ここに大きなリスクが潜んでいます。
身元保証や死後の葬儀手配などを行っていた公益財団法人「日本ライフ協会」は、全国で約2,600人の会員から預託金を集めていましたが、法律で定められた第三者を介する「三者契約」ではなく、事業者が直接管理する「二者契約」で集めた預託金の一部、約2億7,000万円あまりを運営費や職員の人件費などに不正に流用していたことが発覚しました。
結果として同協会は経営破綻・破産手続きに移行し、会員だった高齢者たちは、預けていた預託金の多くを取り戻せない事態となりました(内閣府消費者委員会の調査報告書等より)。
預託金を安全に守る「分別管理」とは?
このようなトラブルを防ぐために最も重要なのが、「分別管理(ふんべつかんり)」です。事業者の運営資金(会社のサイフ)と、お客様から預かったお金(お客様のサイフ)を厳格に分けて管理することを指します。
預託金の管理方法には主に3つの形があり、それぞれ安全性が大きく異なります。
| 管理方法 | 安全性 | 特徴 |
|---|---|---|
| 事業者の自社口座で管理 | 要注意 | 事業者が自由に引き出せてしまうため流用のリスクが高い。倒産時は事業者の財産とみなされ差し押さえられる恐れが大きい。 |
| 提携士業(弁護士等)の口座で管理 | 比較的安全 | 事業者による横領は防ぎやすいが、管理を任された士業事務所自体の信頼性を見極める必要がある。 |
| 信託銀行等の「信託口座」で管理 | 安全性が高い | 信託法により信託銀行の固有財産と完全に分別される。事業者・信託銀行いずれが倒産しても預託金は保護されやすい。 |
契約前に確認すべき3つのポイント
悪質な事業者を見極め、ご自身の財産を安全に守るために、契約前には必ず次の3点を確認してください。
- 預託金の管理方法を質問する「預けたお金は、どの銀行の、どのような口座で管理されますか」とストレートに質問しましょう。分別管理の仕組みを明確に説明できない事業者との契約は避けるべきです。
- 見積り(費用の内訳)が明朗か「基本料金〇〇万円」のようなざっくりした見積りではなく、葬儀代・納骨代・遺品整理代など、何にいくらかかるのかを細かく提示してくれるかを確認しましょう。
- 途中で「解約」や「返金」ができるか死後事務委任契約は、ご生前であれば原則いつでも解除できます。契約書に「解約時の返金規定」が明記されているかを確認してください。
まとまったお金を預けたくない方へ
「安全なのは分かったけれど、生前に数百万円もの現金を預けるのはやはり不安」「日々の生活費や医療費として、手元にお金を残しておきたい」という方には、預託金を一切預けない「遺産からの清算方式」という選択肢もあります。
これは、死後事務委任契約と同時に遺言書を作成し、死後事務を頼む専門家を「遺言執行者」に指定しておく方法です。ご本人が亡くなった後、遺言執行者が遺された預貯金(遺産)を解約し、そこから葬儀代や死後事務の報酬を清算します。この方法なら、生前の金銭的な負担をなくすことができます。
よくあるご質問
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- 死後事務委任契約は契約から実行まで期間が空くため、預託金の管理体制が特に重要
- 過去には預託金の流用による事業者破綻の事例もあり、他人事ではない
- 信託口座など第三者による分別管理がされているかを契約前に必ず確認する
- 預託金を預けたくない場合は、遺言とセットの「遺産清算方式」という選択肢もある

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