認知症になる前にできる備え、任意後見契約とは?死後事務委任契約との違いも解説

行政書士監修
監修:行政書士 田村仁志(登録番号 第26250869号)/滋賀トラスト行政書士事務所

「将来、もし認知症になってお金の管理や介護施設への入所手続きができなくなったらどうしよう」「一人暮らしなので、自分が倒れたときに頼れる家族が身近にいない」。そんな不安を感じたことはありませんか。

おひとりさまや高齢者世帯の終活において、こうした生前の判断能力の低下(認知症など)に備える仕組みが「任意後見(にんいこうけん)契約」です。この記事では、任意後見契約の仕組みから、混同されがちな「死後事務委任契約」との違いまでを行政書士が解説します。

目次

任意後見契約とは?(認知症になった後の強力な味方)

任意後見契約とは、十分な判断能力があるうちに、将来もし認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、自分の代わりに財産の管理や生活上の手続き(身上保護)を行ってくれる人(任意後見人)を自ら選び、任せる仕事をあらかじめ決めておく契約です。

法律上、この契約は必ず公証役場で「公正証書」によって作成することが義務付けられています(任意後見契約に関する法律3条)。

  • 財産管理に関する事務預貯金の管理、生活費や家賃・税金などの支払い、不動産の管理や売却など。
  • 生活・療養看護に関する事務(身上保護)医療機関での入院手続き、介護施設などの入所契約の締結、介護サービス利用の申請など。

任意後見ならではの安全な仕組み(任意後見監督人)

任意後見契約は、本人の判断能力が低下したと判断された際、任意後見受任者などが家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が「任意後見監督人(弁護士や司法書士などの専門職)」を選任した時点から正式にスタート(効力発生)します(同法4条)。

任意後見監督人が任意後見人の仕事をチェックし、その監督人がさらに家庭裁判所へ報告を行うため、預貯金の使い込みなどの不正が起こりにくく、安全性が高い仕組みになっています。

任意後見契約と死後事務委任契約の「決定的な違い」

どちらも「家族の代わりに専門家などに手続きを頼む契約」ですが、この2つの最大の違いは、サポートが行われる「期間(タイミング)」にあります。一言で言えば、「生きている間」を支えるのが任意後見契約、「亡くなった後」を支えるのが死後事務委任契約です。

項目任意後見契約死後事務委任契約
サポートの対象期間生前(認知症になってから亡くなるまで)死後(亡くなった直後から後片付けの完了まで)
主な役割・目的本人の財産管理、施設・医療の契約手続きなど葬儀・納骨の手配、遺品整理、未払い費用の清算など
サポートが開始されるタイミング家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任し、契約の効力が発生したとき契約自体は生前の締結時に有効に成立しており、本人が逝去し「死後事務の履行」が始まったとき
契約終了のタイミング本人が死亡したとき(同時に権限は消滅)死後事務の手続きと清算がすべて完了したとき
作成の形式法律上、必ず「公正証書」で作成公正証書での作成が実務上強く推奨される
注意!任意後見人は「死後の手続き」ができません

「後見人を頼んでおけば、自分のお葬式やアパートの片付けまで全部やってもらえる」と考えがちですが、これは法律上の誤解です。任意後見人の権限は、本人が亡くなった瞬間に法律上すべて消滅します。そのため、どれだけ親身になってくれた後見人であっても、本人の死後に預金を引き出してお葬式を出したり、アパートの遺品整理をしたりすることは原則としてできません。だからこそ、生前のサポート(任意後見)とは別に、死後のサポートである「死後事務委任契約」をあらかじめ結んでおく必要があります。

「自分にはどこまでの備えが必要か」も、無料相談でご状況をお伺いした上でご案内します。

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おひとりさまが選ぶべき「切れ目のない備え」の形

認知症の不安から、死後の手続き、さらには財産の引き継ぎまで、おひとりさまが直面するあらゆるライフステージの不安に「すき間」を作らないためには、次のような段階(移行型)で備えておくことが理想的です。

  1. 財産管理等委任契約(元気なうちの備え)まだ判断能力はしっかりしているけれど、足腰が弱くなって銀行や役所に行くのが大変になった時に備え、事務手続きや財産管理の一部を手伝ってもらう契約です。
  2. 任意後見契約(判断能力が低下した後の備え)認知症などが進行し、自分で的確な判断ができなくなった場合に、あらかじめ指定していた任意後見人が家庭裁判所の監督のもとで、生活や財産を守ります。
  3. 死後事務委任契約(亡くなった後の備え)亡くなった直後のご遺体の引き取りから、希望に沿った葬儀・納骨、住んでいたアパートの退去・遺品整理、医療費の清算などを、受任者が一手に引き受けます。
  4. 公正証書遺言(残った財産を託す備え)死後事務の費用などを清算した後に残った財産を、本当にお世話になった人や、応援したい団体などへ確実に譲る(遺贈する)ことができます。

これらを生前のうちに同一の専門家(または法人)へまとめて依頼(セット契約)しておくことで、人生の後半戦から最期までを一つの窓口でカバーし、途切れることのない安心を手に入れることができます。

よくあるご質問

任意後見契約はいつから始めるべきですか?
判断能力がしっかりしているうちにしか契約できません。「まだ早い」と思っているうちに機会を逃さないよう、早めのご検討をおすすめします。
任意後見人は誰でもなれますか?
信頼できる方であればご家族・ご友人でもなれますが、専門知識が必要な場面も多いため、行政書士などの専門家を選ばれる方も多くいらっしゃいます。
任意後見契約と死後事務委任契約は両方必要ですか?
はい。任意後見の権限は本人の死亡で消滅するため、死後の手続きまでカバーするには死後事務委任契約も別途結んでおく必要があります。
任意後見監督人にはどんな人が選ばれますか?
弁護士や司法書士などの専門職が家庭裁判所によって選任されるのが一般的です。任意後見人の事務を継続的にチェックする役割を担います。
元気なうちから財産管理を手伝ってもらうことはできますか?
はい、「財産管理等委任契約」を結ぶことで、判断能力が低下する前の段階から事務手続きの一部を任せることができます。
田村仁志(行政書士)
田村仁志(行政書士登録番号 第26250869号)
行政書士・宅建士・FP・測量士補/滋賀トラスト行政書士事務所 代表

相続・終活分野を中心に、大津市・滋賀県全域でご相談に対応。同一フロアに併設する司法書士事務所と連携し、死後事務委任契約から相続登記まで一貫してサポートします。

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まとめ
  • 任意後見契約は、認知症など判断能力の低下に備えて生前をサポートする契約
  • 任意後見人の権限は本人の死亡と同時にすべて消滅し、死後の手続きは行えない
  • 死後の備えには、別途「死後事務委任契約」が必要
  • 財産管理等委任契約→任意後見→死後事務委任→遺言、と段階的に備えると切れ目がない
まずは、お気軽にご相談ください
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